気候変動による影響は年々深刻化し、グローバルかつ喫緊の課題となっています。SDGs(持続可能な開発目標)やパリ協定目標、また各国におけるGHG(温室効果ガス)排出量ネットゼロ目標など社会的な関心が高まるなか、企業にも積極的な対応が求められています。
気候変動は海上輸送サービスを提供する当社グループにおいても、事業環境に深刻な影響を与える可能性があることから、気候変動対策は重要な経営課題の一つであると認識し、取り組み強化をマテリアリティの一つと位置付けています。
当社は持続的な企業価値の向上を目的として、2021年7月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同を表明し、2022年からTCFD提言に沿った4要素(ガバナンス・リスク管理・戦略・指標と目標)について情報開示を行っています。
今後もTCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示を積極的に進めると同時に、サプライチェーンを通じた社会全体のカーボンニュートラルの実現を目指し、2050年GHG排出量ネットゼロに挑戦します。

気候変動問題は当社の事業の持続可能性にとって極めて重要であるため、社長執行役員が最終的な責任者として、取締役会の監督の下で対策の立案と実施を行っています。

経営の基本方針、重要事項を決定するとともに、業務執行状況を監督する機関であり、原則として毎月1回開催しています。
当社は執行役員制度を導入しています。取締役会が決定した基本方針に基づき、気候変動を含む経営課題や重要事項について、取締役会の決議と監督の下に業務を執行しています。
2024年6月に従来の ESG 総合委員会を発展させる形で、社長執行役員を委員長、全執行役員を委員とするサステナビリティ委員会を設立しました。開催回数を増やすとともに、人権、気候変動、生物多様性、非財務情報開示など、サステナビリティ全般の事項に特化し、取締役会に報告、提言を行います。
社長執行役員が委員長を務め、当社全体で設定された年度目標、行動内容、手段、タイムスケジュール等について、環境目標達成のための進捗状況をレビューし、評価する役割を果たしています。環境問題については年間を通して安全運航・環境保全推進委員会から執行役員会に報告が行われ、そのアウトプットが次年度の計画に反映される仕組みが確立しています。また、安全運航・環境保全推進委員会の活動状況や活動計画について、取締役会に報告を行います。
NSユナイテッド海運グループ環境方針の下、環境の保護と改善活動を効果的かつ着実に行うことを目的として環境マネジメントシステムを構築し、継続的な改善を実施しています。
毎年、管理船舶全船と各部署の内部監査を実施し、安全運航・環境保全推進委員会において委員長である社長執行役員に結果報告を行い、システムが有効に機能していることを確認しています。また、国際規格ISO14001:2015の認証を取得しており、毎年、日本海事協会による外部審査を受けています。
気候変動という長期的かつ不確実性の高い事象に関するリスク・機会を特定し、それらが当社グループに及ぼし得る影響について主観を排除した議論を行うために、TCFD提言に沿ったシナリオ分析を行いました。
シナリオ分析においては、不確実な将来に対し当社グループのレジリエンスを確認するため、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」というパリ協定目標の達成を見据えた「2℃未満シナリオ」と、当社の長期目標でもある2050年CO2排出ネットゼロ/カーボンニュートラルの達成を想定した「1.5℃シナリオ」、および世界的に気候変動対策が十分に進展しない場合を想定した「3℃シナリオ」について検討しています。
各シナリオで想定したそれぞれの将来の事業環境の変化、および特定したリスクと機会は以下のとおりです。
これらのリスク又は機会が発現しうる期間として、短期(2025年まで)、中期(2030年まで)、長期(2050年まで)を想定しています。
分析に参照したシナリオは、IEA WEO(World Energy Outlook)の、持続可能な発展シナリオ(SDS)、宣言国ネットゼロ達成シナリオ(APS)、2050年ネットゼロ実現シナリオ(NZE)、公表政策シナリオ(STEPS)です。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した事業「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発プロジェクト/アンモニア燃料船の開発」に関係5社で応募し、採択されました。本プロジェクトは2028年までのできるだけ早期にアンモニア燃料船を日本主導で社会実装し、他国に先駆けて推進システム・船体開発と保有・運航を目指すものです。

帆を利用した風力による低燃費技術の開発を目指し、株式会社名村造船所との共同研究を進めてまいります。

日本製鉄株式会社、および豊田通商ペトロリアム社の協力のもと、大型鉱石船NSU BRILLIANCEにバイオディーゼル燃料供給の試験航行を実施した事例を皮切りに、複数例、大型船でバイオディーゼル燃料を使用した航行を実施しています。
同燃料は廃食用油等を再利用しており、従来の化石燃料と比べて燃料の生産から消費までのライフサイクルを通した温室効果ガスの排出削減効果が期待されます。
国内初となるLNG専焼主機とリチウムイオンバッテリを搭載した「下北丸」が竣工しました。LNGタンクには日本製鉄株式会社が開発した7%ニッケル鋼板を舶用タンクとして初めて採用しました。
本船推進システムのCO2排出削減効果は、従来の同型船比でマイナス23.56%(常用出力時は約マイナス30%)となり、リチウムイオンバッテリによる港湾内ゼロエミッション航行も実現しています。

内航貨物船として初めてハイブリッド推進システムを搭載したリチウムイオン電池搭載型内航鋼材輸送船「うたしま」が就航。
一般的なハイブリッド車2,700台分の電池を積載し、停泊時・湾内航海時におけるCO2ゼロエミッションの実現も可能とし、「ゼロカーボン・シップ」実現への第一歩となりました。

日本船舶海洋工学会主催の「シップ・オブ・ザ・イヤー2019」で、NSユナイテッド内航海運(株)の運航する「うたしま」が、国内初のリチウムイオン電池式ハイブリッド船として、「小型貨物船部門賞」を受賞しました。
(株)ウェザーニューズが提供する、運航船のCO2排出量をEEOI(Energy Efficiency Operational Indicator)などの指標で表示・可視化するサービスを導入しています。
個船ごとの環境パフォーマンスを把握することで、当社フリート全体のCO2排出量削減・高効率化を推進していきます。

2021年11月より、空調以外に使用している電力を対象に、100%再生可能エネルギー由来の電力へ切り替えました。これにより、年間約120トンのCO2排出削減を見込んでいます。
このほかにも、さまざまな取り組みを行っています。リンク先をご参照ください。
経営に重要な影響を及ぼすリスクを網羅的かつ分かりやすくするためにリスクマップを作成し、優先度ごとにリスクを識別し対応する取り組みを全社的に展開しています。気候関連リスクについてもそれぞれの影響度やその発現時期・可能性をマトリクス化することでリスクの度合いを一覧できる形にしており、全社的なリスク管理の枠組みの中に組み込んで識別・評価および管理する体制を構築しています。
また環境マネジメントシステムにおいては安全運航・環境保全推進委員会が主体となり、気候関連問題を含む環境課題の情報交換、審議、決定が行われています。継続的改善へのコミットメントを含む環境方針は各船や社内主要場所に掲示し周知を行っており、当社のHPにも公開しています。
環境目標達成のための活動の進捗状況は、安全運航・環境保全推進委員会で監視され、その結果が年1回のマネジメントレビューで評価されています。また、評価の結果については、ISO14001:2015外部監査の一環として第三者機関(日本海事協会)の確認を受けています。目標は毎年見直され、PDCAサイクルに沿って更新および修正しており、これらもすべてISO 14001:2015に準拠しています。これらの取り組みは当社が意図する結果の達成に繋がり、望まない影響を防止又は低減し、継続的改善を達成するプロセスとなっています。
2030年までにGHG年間排出量を
2019年比25%削減する。
2050年カーボンニュートラルに向けた2030年の中間目標として、中期経営計画「FORWARD 2030 II」の中で新たに設定しました。
2050年までにカーボンニュートラル実現を目指す。
脱炭素社会に向けた日本政府および日本船主協会の目標を支持し、サプライチェーンを通じた社会全体のカーボンニュートラルの実現を目指し、2050年ネットゼロに挑戦します。